イジワルな恋人
【亮SIDE】
「亮、今日の午後の空き時間、バトン練習だって聞いた?」
珍しく教室にいた俺に、同じクラスの関 武史が話しかけてきた。
クラスの大半が俺を怖がって敬遠している中、武史だけは最初からそんなのお構いなしだった。
冷たくしても懲りずに話しかけてくる武史を、最初はうっとおしく感じていたけど、最近では完全に根負けして、普通に会話するまでになった。
「へぇ……それが何?」
「何って、亮、選手に選ばれてるだろ? 俺もだけど。
出なかったら化学の実験の片付け一年だって」
武史が前の席の椅子に反対に座りながら言う。
「嘘つくなよ」
普段からふざけた事ばかりを言う武史に冷ややな視線を向ける。
「いや、今回はマジで。賀川ちゃんが言ってた」
武史の口から出た“賀川”と言う名前に、俺は顔をしかめる。
「ほら、体育祭って賀川ちゃんが職員の実行委員だからさ」
……賀川のいうとおりにするのも気にくわねぇけど。
だからって一年間も賀川の授業で片付けするなんて考えられねぇし。
サボったら絶対うるせぇし。
どっちも選びたくない選択肢を並べられて、ため息がもれる。