イジワルな恋人


「奈緒の兄貴は、三年前、両親と一緒に亡くなったんだ」


賀川の言葉に、奈緒の言っていた言葉が思い出される。


『死んじゃったの……二人とも』

ひどく悲しい顔をしたから、それ以上聞けなかった事―――……。


それを、まさかこんな形で、賀川から聞くことになるとは思ってもみなかった。


「だから、別に頼まれたわけでも何でもないのに、俺が勝手に兄貴代わりをしてるんだ。

奈緒の兄貴とはガキの頃からずっとつるんでたから。

あいつがどれだけ奈緒を可愛がってたか知ってるからさ。

家族も、家も……大事なモノ全部をなくした奈緒を、放っておけなくて」

「……」

「泣けばいいのに……強がって笑うだけで、無理ばっかりするから、余計に心配でさ」


賀川が奈緒の寝顔を見ながら話す。


愛しそうに、優しい顔で。




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