イジワルな恋人
【第七章】 告白
【亮SIDE】
「……おっと。俺、リレー監督だし戻らなきゃ」
賀川が笑いながら立ち上がる。
そして、ドアに手をかけてから俺達を振り返った。
「今の話秘密にしてな? 他の生徒には適当にごまかしとくから」
「……言われなくても誰にも言わねぇよ」
こいつが悲しむようなこと……、言えるわけねぇだろ。
賀川が出て行ってから、奈緒に視線を落とす。
まだ眠っている奈緒を見つめていると、
「あたしも練習戻ります。奈緒お願いしますね」、そう言って梓も賀川を追うように保健室から出て行った。
奈緒の眠る保健室が急に静まり返る。
俺はさっきまで賀川が座っていた椅子に腰を下ろした。
そして、眠る奈緒の手を握る。
知った過去に、胸がえぐられるように痛かった。
……俺は、賀川が想うみたいに、あんな見守るようにはこいつを想えない。
さっきの話だって、こいつにしたらつらいだけの話なのに……
驚いた反面、安心した自分がいた。
賀川との関係に、安心した自分がいた……。
この期に及んで、こいつの横に座る賀川に嫉妬してた。