イジワルな恋人


いじめてやるつもりで言った言葉に、奈緒が焦った様子で言い訳をする。

そんな奈緒が可愛く思えて、俺は知らない振りを続ける。


「……そういう関係って?」

「……だから、亮が思ってるような……恋人とか、そういう関係じゃ……」


俺に、一生懸命に説明する奈緒の気持ちが知りたくて……、一つの賭けに出る。


『……頼むから、否定しろよな』

そんな事を強く思いながら……ゆっくりと口を開いた。


「……別に俺に言い訳しなくてもいいんじゃねぇ?

俺はただの彼氏のフリしてるだけだし。関係ねぇし」


握っていた手を離してから、奈緒を見つめた。


もし……、

もしも、返ってくる答えが俺の言ったことを肯定するものだったら―――……。



一緒にいた間、奈緒の気持ちは動かなかったって事だ。

……これっぽっちも。



俺と奈緒の間に沈黙の時間が流れる。



「そう……、だね」

「……―――」


奈緒が言う。


それは……、俺の言葉を肯定するモノ。


奈緒の言葉に、俺は奈緒から目を逸らす。



……やっぱり、こいつは……


奈緒は、俺の事なんかなんとも―――……。



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