イジワルな恋人



「だけど……っ」


続けられた言葉に、俺は再び奈緒に視線を移す。

奈緒は赤い顔を少しうつむかせて、手にはベッドの布団を握っていた。


奈緒の緊張が、保健室の空気を張り詰めさせていた。


「……確かにそうだけど、でも……」


奈緒の布団を握る手に、ぎゅっと力が入る。


うつむきながらも、必死に何かを伝えようとしている奈緒を、目を逸らさずに見つめる。


「……あたし、好きとかそういうのって分かんないって言うか……

分かるんだけど、そういうのはもうしないって思ってるし、男の人は苦手だし……。

……でも、亮は違う……。

うまく説明できないけど……、確かにフリだけど……。

そんな風に、冷たく言わないで……。

関係ないなんて、寂しくなるような事、言わないで……っ」



その声は少し震えていて、奈緒の目には涙が溜まっていた。


奈緒の視線が俺を捕らえる。

涙を堪えながらも俺をじっと見つめる奈緒と、俺の視線がぶつかって―――……。




次の瞬間には、奈緒を抱き締めていた。



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