イジワルな恋人
「……ちゃん、奈緒ちゃん」
おばあちゃんの呼ぶ声に、我に返る。
驚いて怯えた顔で振り返ったあたしに、おばあちゃんが驚いた表情を浮かべた。
「あ……ごめん、考え事……」
すぐに笑顔を作ると、おばあちゃんは少し悲しそうに微笑む。
「……時間だよ」
それだけ言うとあたしにお弁当を差し出した。
「ありがと。行ってきます」
笑顔で言うってから玄関を出た。
そして、立ち止まって閉めたドアを振り返った。
……おばあちゃん、きっと変に思ったよね。
おばあちゃんの視線に気付いてたのに、振り返る事もできなかった……
立ち止まった足を無理矢理進める。
……ごめんね。今止まったら、歩けなくなっちゃうから。
今話したら……多分、泣いちゃうから。
少しうつむきながら、待っていた亮の車に乗り込んだ。
ごめん……。
おばあちゃん、ごめんね……。
お父さん、お母さん、健兄……。
あたしのせいで……ごめん。
ごめんね―――……。