イジワルな恋人
「……何かあった?」
突然の聞こえた声に、亮を見上げる。
「……なんかあったろ」
「えっ……なんで?」
『なんでわかるの?』
そんな思いでいっぱいだった時、亮が困った表情を浮かべながら口を開いた。
「なんでって……」
少し気まずそうに言ってから、亮の視線があたしの手元に移る。
あたしもそれを追うと、自分の手が、亮のYシャツの裾を握っている事に気が付いた。
「……あれっ!?」
慌てて手を離す。
……なんで?! いつの間に……?!
真っ赤になった顔を両手で隠そうとして……。
でも、頬を隠すハズだった手は、亮に握られてシートの上に落ちた。
「……え?」
見上げると、亮の視線は窓の外に向けられていて……あたしからは亮の表情が見えない。
……でも。
「……たまには俺に甘えてもいいんじゃねぇ?」
……亮、耳が赤いよ……?
無理して言ってくれた亮を見て……嬉しくなって笑う。
「……ありがと」
少し冷たい亮の手から伝わってくる優しさが、嬉しかった。