イジワルな恋人
「あ、桜木先輩!」
「え、なんで一年の廊下歩いてるの?!」
「水谷さんの荷物持ってあげてる!
えー、先輩って彼女には優しいんだ……」
「ますますかっこいい……」
……ほら、こうなるし。
あたしに悪い虫がつく前に、亮についちゃうじゃん。
……―――って、これじゃ……、
あたしも、亮を好きみたいじゃない……。
「……奈緒?」
立ち止まったあたしに、亮が1年2組の教室の前から声をかけた。
「あ……」
急いで亮の傍まで走り寄って、鞄を受け取る。
「これやたら重かったけど、何入ってんの?」
「あ……着替えとお弁当。
今日お弁当気合い入れて作りすぎちゃって……」
「またかよ」
「うん。でも今日のは自信作だから楽しみにしててね!」
笑った亮に笑顔を返すと、亮は黙ったまま片手で顔を隠して背中を向ける。
赤く見える耳に亮を覗き込もうとして……それを亮に止められる。