イジワルな恋人
【第九章】 過去
【亮SIDE】
「……久しぶりだね、水谷。俺の中学の卒業式以来かな」
中澤が優しく微笑んで奈緒を見る。
「……そうですね」
奈緒も穏やかに……、でも少し気まずそうに笑った。
「……知ってんの?」
二人の空気に割り込むように言うと、奈緒は俺と視線を合わせないようにして答える。
「あ……うん。中学の時の先輩……」
「……へぇ」
奈緒と中澤の雰囲気は……、とてもじゃねぇけど、ただの先輩後輩には見えなかった。
『どういう関係?』
言葉が喉まで出てきて……、でも、プライドが止める。
「……元気そうで安心したよ。
……今は桜木と付き合ってるの?」
中澤が俺にチラっと視線を向けて遠慮がちに聞く。
「あ……違うんですっ!」
「……―――」
中澤の言葉に、奈緒が動揺して、すぐに否定した。
……俺との関係を。
「え、でも……」
「違うんですっ! あたしが……、あたしが悪いんです。
ごめんなさい……」
俺との仲を必死で否定する奈緒を……、俺はただ黙って見ていた。