イジワルな恋人


「……そろそろ弁当の時間だろ? 屋上行くか」


俺の言葉に、奈緒が少し驚いたような表情を浮かべる。


「……どうした?」


不思議そうに見つめる奈緒に聞くと、奈緒がゆっくりと口を開いた。


「……何も聞かないの?」


奈緒の言葉に俺は小さく笑ってから歩き出す。


「……聞きたいけど、おまえから言ってくれるまで待つよ。

無理矢理聞きたいとは思ってないから。

……聞いてほしいなら聞くけどな」


意外だったのか、奈緒はしばらく俺を見つめて、少し気まずそうに笑ってから俺の後ろを歩き出す。


「……ありがと。優しいね、亮」


奈緒の言葉に立ち止まって、振り向く。

それに気付いた奈緒も、顔を上げた。

奈緒と目が合って……ギリギリまで顔を近づける。


「……俺に惚れた?」


奈緒を元気づかせるために言った冗談だったのに。

返ってきたのはいつもの怒った言葉ではなくて……。


俺を見つめたまま顔を真っ赤にさせた奈緒に、俺まで戸惑う。

そして、奈緒が気まずそうに目を伏せた。



< 184 / 459 >

この作品をシェア

pagetop