イジワルな恋人
「……そろそろ弁当の時間だろ? 屋上行くか」
俺の言葉に、奈緒が少し驚いたような表情を浮かべる。
「……どうした?」
不思議そうに見つめる奈緒に聞くと、奈緒がゆっくりと口を開いた。
「……何も聞かないの?」
奈緒の言葉に俺は小さく笑ってから歩き出す。
「……聞きたいけど、おまえから言ってくれるまで待つよ。
無理矢理聞きたいとは思ってないから。
……聞いてほしいなら聞くけどな」
意外だったのか、奈緒はしばらく俺を見つめて、少し気まずそうに笑ってから俺の後ろを歩き出す。
「……ありがと。優しいね、亮」
奈緒の言葉に立ち止まって、振り向く。
それに気付いた奈緒も、顔を上げた。
奈緒と目が合って……ギリギリまで顔を近づける。
「……俺に惚れた?」
奈緒を元気づかせるために言った冗談だったのに。
返ってきたのはいつもの怒った言葉ではなくて……。
俺を見つめたまま顔を真っ赤にさせた奈緒に、俺まで戸惑う。
そして、奈緒が気まずそうに目を伏せた。