イジワルな恋人
「……ばか」
「……まじで?」
まるで俺の言葉を肯定するような奈緒の態度に、目の前の奈緒を見つめる。
奈緒は、そんな俺の視線から逃れるようにうつむいた。
「……おまえ、……俺が好きなのか?」
もう一度聞く。
「…………ない」
「なに?!」
少し声を張り上げる。
カッコわりぃとかそんな考えは浮かばなかった。
奈緒の言葉を聞き返すのに夢中だった。
……でも。
奈緒の答えは、俺の望んでいたモノじゃなかった。
「……そんなわけないじゃん。
……言ったでしょ?
もう……誰も好きにならないって……」
奈緒はうつむいていて、亮からは表情が見えない。
……でも。
「……先に屋上行ってて」
そう言って走りだそうとした奈緒の腕を後ろから掴んだ。
「……なんで泣いてんだよ」
奈緒の目から、涙がこぼれていた―――……。