イジワルな恋人
【奈緒SIDE】
亮に掴まれた腕が、熱い―――……。
「……なんでだよ」
「……なんでもないよ。
なんでもないから……、これ以上聞かないで……」
あたしが必死に出した言葉に、亮が掴んでた腕をゆっくりと離す。
「……お弁当持ってくるね」
それだけ言い残して、走り出した。
……嘘だよ、亮。
本当は、亮が……好き。
『俺が好きなのか?』
本当は……、頷きたかった……っ。
気付いた途端に、気持ちがどんどん溢れ出す。
亮の……、不機嫌そうな顔……、
意地悪な笑顔……、
優しい微笑み、
低い声、
抱き締められた時の匂い、
腕の強さ……、
亮の何を思い出しても、胸が苦しくなる。
なんで、こんなになる前に気付かなかったんだろう……。
こんなに……、
こんなに亮が好きなってから気づいたって……遅いのに。