イジワルな恋人


……言えない。

言えないよ―――……。


頬に涙が伝う。

雫になった気持ちが、キラキラ光りながら地面に落ちていった。




――三年前、火事があった翌日、中澤先輩があたしを訪ねてきた。


『何もできないけど、でもそれでも傍にいたい。……水谷が大切だから』って。


でも、あたしは断った。


『一人でいたいから。……もう、誰も好きになりたくない……』って。



火事は放火で、あたしに想いを寄せてた男の犯行だったから―――……。


後になって警察から聞かされた。


『あんたが男と歩いているのを見て、頭に血が登って犯行に及んだらしいよ』


自分のせいだと思うと、泣くこともできなかった。

その時、決めた。


『もう、誰も好きにならない』って。

もう……誰も傷つけたくないって。




だから……言えない。


亮が好きなんて……、絶対に言っちゃいけないんだ。




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