イジワルな恋人


「あ……」


流れる涙を拭いてから、応援席に戻ろうとして、梓に頼まれたウーロン茶を持っていない事に気付いた。


そういえば亮が拾ってくれてた気がする……。

……もう屋上行っちゃったかな。

近くの教室の窓ガラスで泣き顔じゃないことを確認してから、中庭に向かった。


渡り廊下の向こうにある中庭。

ぼーっとしながら歩いていたあたしの目に、亮の姿が映った。

自販機に背中をつけたまま空を仰ぐ亮の姿が。


「……、」


呼ぼうとした瞬間、亮が空を見上げたままため息をついた。


それがなんの意味のため息なのかは分からなかったけど、亮の横顔が、とても悲しそうに、寂しそうに見えた。


……あたしのせい?

あたしが亮にあんな顔させてる……?


「……っ」



あたしが知ってる亮は、いつも不機嫌そうで、ちょっとエッチで、あたしが怒ると意地悪に笑う。

……でも、優しくて……、いつもあたしに気を使ってくれる。


あたしの言葉に、笑ってくれる。



あんな顔をしてる亮……、あたしは知らない。





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