イジワルな恋人
翌日は、昨日の雨が嘘のように晴れた。
明け方まで雨が降っていたのか、庭のアジサイに滴が残っていた。
葉っぱに乗った滴が、朝日を浴びて、キラキラ光る。
昨日の事ばかりが頭から離れなくて、あまり眠れなかったあたしは、5時すぎにベッドから出てジョギングに出掛けた。
なにもしないでいると、どうしても考えちゃうから。
そんな自分を取り払いたくて、走った。
でも……。
走っても走っても……、昨日の事が頭から離れない……。
先輩の声も、表情も……あたしの頭から離れようとしなかった。
川沿いの道に通りかかった時、突然、声をかけられた。
「水谷」
「あ、真ちゃん。ジョギング?」
あたしの後ろに立っていたのは、Tシャツにジャージ姿の真ちゃんだった。
首にかけた白いタオルが爽やかに見える。
「そ。おまえも?」
「うん」
真ちゃんが走るのを止めて歩き出したから、あたしもその隣を歩いた。
6月の太陽は登るのが早くて、朝6時からあたし達を照らしていた。