イジワルな恋人
珍しく午前の授業を全部出席してから屋上に行くと、すでに奈緒の姿があった。
俺を待つ奈緒の後ろ姿を見て……、瞬間、中澤の顔が頭に浮かぶ。
けど、振り向いた奈緒の笑顔を見て不安が飛んでいった。
「亮」
笑いながら呼びかける奈緒の目は、真っ直ぐに俺を見ていた。
そんな姿に、小さく安堵のため息をもらす。
安心からこぼれた笑みを隠しながら、奈緒の隣に座る。
「珍しいね、亮が屋上にいないなんて」
「……まぁな。授業でてたから」
俺から出た言葉に、奈緒が驚いた顔をした後笑い出す。
「……なんか亮が授業受けてる姿想像できない」
朝とは違う明るさに、少し疑問を持ちながらも俺も笑みをこぼした。
奈緒の笑顔が、当たり前に自分に向けられることが俺を苦しいほどに締め付ける。
……もし、こいつが中澤を好きだとしても。
俺に笑いかけてくれるんなら……、それだけでいい。
少しでも一緒にいたいって思ってくれんなら、それでいい。
……―――例え、奈緒が俺が好きじゃなくても。
今は、ただ傍にいたい。
奈緒の傍に。