イジワルな恋人


告白、するなら、今かもしれない。

亮に気持ちを伝えるって決めたんだから……。

自分の気持ちに正直になるって、決めたんだから。


手をきつく握り締めると、脈を打つ振動が手に伝わってきて余計に緊張を高めた。


……知らなかった。

告白って、こんなに緊張するものなの……?!


今まで恋を避けてきたあたしには、まったくの未経験ゾーンの告白が、心臓のリズムを異常なほどに速めていく。

襲いかかってくる尋常じゃない緊張の中、あたしは顔を少しあげて、亮の姿を覗き見た。


亮は、屋上のフェンスに寄りかかって座っていた。

風に吹かれている横顔がとても涼しそうに見える。

肩から伸びる腕は細く見えるのにたくましくて……。



あの腕に抱き締められた事があるなんて信じられない気持ちになる。

優しい笑顔も真剣な目も……、

あたしの知っている亮、全部が愛しく思えて……。


不意に、あたしを見た亮と目が合う。


「……っ」


大きく跳ねた胸に、慌てて目を逸らす。


……やばい。

亮がすごくかっこよく見える。


あたしっ……、こんな人にこれから告白するの……?


そんなの、無理だよ……。

大体告白って、なんて切り出せばいいの? 

いきなり好きって言えばいいの?


弱気な気持ちが心を支配して……、顔をしかめてうつむく。



だけど……、だけどっ!



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