イジワルな恋人
【第十二章】 想う人は
【奈緒SIDE】
「ね、桜木先輩今日の打ち上げくるって?!」
翌日、朝一番で梓が聞いてきた。
放課後の打ち上げを意識してか、教室がいつもより賑やかに感じる。
「あ、おはよ。うん、『面倒くせぇ』とか言ってたけど結局出るって」
机に鞄を置いて、椅子に座りながら返事をする。
そして視線を上げた時、梓がニヤニヤしている事に気付いた。
「……なに?」
「それさ、きっと奈緒が心配だからだよ。
3学年合同だし、他の男に手出されないようにさ。いいなぁ、ラブラブー」
いつもなら、きっと顔を赤くしてたのかもしれない。
だけど、今は梓の言葉を素直に受け入れる事はできなくて。
表情を曇らせたあたしを不思議に思ったのか、梓が心配そう覗きこんできた。
「どうしたの?」
「……なんか亮ちょっと変なんだよね。
なんか……あたしと距離をあけてるような感じ」
……今日の朝は、目も合わせてくれなかった。
会話だって、上の空だったし。
……あたし、何かしたのかな。
それか、もしかしたら、あたしの事なんて、もう……。
告白してくれたのに、それに応えられないまま結構経つし……もしかしたら、
「亮……、あたしの事、もう好きじゃないのかも……」
独り言のようにぽつんと言った言葉に、梓の表情が驚きに変わる。