イジワルな恋人
「え……っ、ありえないでしょ! 好きじゃなきゃ、送り迎えなんかしないって!」
「……でも、亮優しいから。
あたしに『やめる』って言い出せないだけかも……」
そうぼやいて、歪ませた顔を机につけた。
……告白、昨日しとけばよかった。
なんか、どんどん怖くなる……。
亮に想いを伝えることが……、
拒絶されることが、怖くなる。
「もー! そんなマイナス思考でどうすんの?」
「だって……」
「じゃあ、桜木先輩がもしも、本当にもしも奈緒の事好きじゃなかったら奈緒は諦められるの? 別れられるの?」
梓がしゃがんで、あたしと視線を合わせる。
それに気付いて顔を上げると、梓は微笑んで見せた。
「……」
……亮が、あたしを好きじゃなかったら。
あたしは……亮から離れられる?
亮を諦められる?
あたしは好きなのに……?
こんなに好きなのに……、何も言わないまま、離れられる……?
そんなの―――……
「……ううん。離れられない。
あたしは、好きだもん……。頑張りたい」
あたしの言葉に、梓が満足そうに笑う。