イジワルな恋人
掃除を終えて食堂に行くと、もうかなりの人が集まっていた。
無意識にあたしの目が亮の姿を探し出して、すぐに目を逸らした。
……亮の隣に山本さんの姿があったから。
今日は体育祭の打ち上げで、夕方からピザが用意されるらしいから、お昼は抜きにした。
だから……、今日は朝しか会ってない。
朝の車の中だって、不機嫌そうだったし……
ちゃんと話せてないのに。
寂しい気持ちに、もう一度、亮を見る。
亮は、山本さんの隣でつまらなそうに座っていて、逆隣には関先輩がいた。
……あ、笑った。
亮が関先輩の言葉に笑う。山本さんは、笑顔を見せた亮を、嬉しそうな表情で見つめていて……。
見ていられなくなって、再び目を逸らした。
……なんで、山本さんの隣で笑ってるの?
今朝、あたしとは目も合わせようとしてくれなかったのに。
たったそれだけのことなのに……。
告白の決意が揺れる。
「奈緒! こっち」
固まったまま動けなかったあたしを呼ぶ梓の声に、安心して振り向いた。
「席とっといたよ。もうすぐピザ届くって!」
元気にはしゃぐ梓に笑顔を向けながら、用意された椅子に座る。