イジワルな恋人


亮と山本さんはあたしの背中側で、あたしからは振り向かない限りは見えない。


二人の姿が視界に入らない事に少しほっとして、小さなため息をつく。

……だけど。


「やだぁ、関先輩おかしー。ねぇ、桜木先輩?」


山本さんの甘えた声はあたしの席まで届いてきて。

面白くない気持ちに、表情を曇らせた。


「山本さん、ずっとあんな感じで桜木先輩にくっついてるんだよ。

嫌な感じだよね! 

体育祭でおんぶなんかされたから勘違いしてんだよ、きっと。

……そりゃあ、確かに巨乳だけどさ。山本さんが座ってる席だって、多分、桜木先輩が奈緒のために空けといたのに!」


梓の文句に思わず笑みがこぼれる。


「……いいよ。せっかくの打ち上げだしさ、楽しくしようよ。

カッコいい人探すんでしょ?」

「そうだけどさー」


納得していない様子の梓を見て微笑む。


まるで自分の事のように言ってくれる梓に、イライラしてた気持ちが少しだけ落ち着く。



「ここいい?」


後ろから声がして、あたしと梓が振り向く。

あたしの隣の椅子を引きながらそう言ったのは……。


「あ、中澤先輩……」


少し戸惑っているあたしを見てか、代わりに梓が答えた。



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