イジワルな恋人


「先輩、こんなとこいていいんですか? 

青組が優勝したのって、先輩の活躍があったからだってみんな言ってますよ? 

そんな主役がこんな端っこにいちゃダメですよー」


梓の笑顔の裏に隠された攻撃を知ってか知らずか、先輩も笑顔で返す。


「はは。大丈夫だよ。ちょっとくらい息抜きしないとね。

……空いてるなら、座らせてもらうね」

「はは……結構強引」


梓が笑顔を浮かべながら、ぼそっと呟く。

二人の意味深な笑顔に挟まれて……、あたしもぎこちなく笑った。



「今日は桜木と一緒じゃないんだね」

椅子に座りながら、中澤先輩が言う。

近い距離に……少し戸惑いながら頷いた。


「……はい」


あまり触れられたくない部分をつかれて、声のトーンが下がってしまう。


「……こないだはごめんね」

「え……」

「急にあんな事言って……水谷も困ったよな」

「……あんな事って?」


突然聞こえた低い声に……、胸が締め付けられる。


振り返らなくったって、誰だか分かる。

反応した胸にゆっくり顔をあげると……、不機嫌そうな亮があたし達を見下ろしていた。



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