イジワルな恋人
「あ、あたしも、亮しか欲しくない……」
少し震える声で、亮を真っ直ぐに見つめて言う。
亮が、心の奥底で気にしてるハズの中澤先輩の存在を取り払いたくて……、亮を見つめたまま言った。
……絶対に気にしてる。不安にさせてる。
優しいから、何も言わないけど、でもきっと……。
あまりにじっと見つめてくるから恥ずかしくなる。
だけど、亮の不安を少しでも取りたくて、目を逸らさずにいると、亮がふっと笑みをこぼした。
「……おまえエロいな」
「えぇ?! ……あっ違う! そういう意味じゃなくて……っ」
真っ赤になって慌てると、笑顔を見せた亮があたしの手をとって歩き出す。
「……じゃあ行くか」
「……行くって……、どこに?」
流れが流れだけに、恐る恐る聞くと、亮が意地悪に笑う。
「……どこがいい?」
困ってうつむいたあたしを見て、亮がまた笑った。
「ばぁか。食堂だよ。昼抜きだったから腹減ったしな。……どこだと思った?」
口の端を上げながらからかってくる亮を叩く。
繋がれた手が二人の間で少しぎこちなく揺れていて……それが、恥ずかしいのに嬉しくて。
繋がれた手をずっと見つめていた。
届いたばかりのピザのいい匂いが廊下まで広がっていた。