イジワルな恋人
食堂に入ると、座っていた席の隣に中澤先輩の姿はもうなくて。
ほっとして胸をなでおろす。
山本さんは……?
視線をを向けた先には、まだ亮の席の隣を陣取っている山本さんの姿があった。
「……そんなに気になる?」
山本さんを見ていたあたしを、亮がからかう。
「あ、奈緒! ピザ来たよー」
笑いかける梓に、笑顔を返してそれぞれ席に戻った。
「どこ行ってたのー? っていうか、桜木先輩と仲直りしたみたいでよかったね」
意味深な笑みを浮かべる梓は……きっと、変なことを想像してるに決まってる。
「……梓が思うような事はしてないからね」
そう言って梓のおでこをはじいた。
……でも、これで梓に嘘つかなくていいんだ。
今まで付き合ってるなんて嘘ついてて、正直、罪悪感を感じてた。
でも……、もう嘘じゃなくなったんだよね。
あたしの気持ちも、亮との関係も……。
本当に、付き合ってるんだから。
「やっぱり何かあったんじゃん。にやけちゃってやらしー」
嬉しさのあまり緩めた顔を見て、梓が楽しそうに笑った。