イジワルな恋人
「……だ、だってうちは接客業だよ?
笑いたくもないのに笑顔作らなくちゃいけないし、気に入らないお客さんがいたって、殴ったりしちゃいけないんだよ?!
頭下げたりしなくちゃだよ?!」
あたしの力説に一瞬黙った亮だったけど、北村さんがいらない事を言ってきて……話がまずい方向に向かい出す。
「それは忍耐力がついていいですね」
「そうだな。……まぁ、なんとかなるだろ」
「ならないよ! 無理だよっ!」
その後も反対を続けたけど、何を言っても亮の意思は固いみたいで……。
あたしの不安を乗せた車が、バイト先の駐車場に停車した。
「北村、話つけてこい」
「はい。かしこまりました」
そう言うと、北村さんが車から降りて、足早に店内へ向かう。
「北村さん!」
あたしも車を降りて、慌てて北村さんを追いかけた。
「北村さん、うちのバイトって社内恋愛禁止だし、友達がいるから受けるとかいうのもダメなんです。
だから、ここには知り合いはいないって言わないと……」
あたしの助言に、北村さんが優しく微笑む。
反対する気もあったのに、こんな微笑みを見せられると……なんだか何も言えなくなってしまう。