イジワルな恋人


「あの女、ざまぁねぇな」


帰りの車の中で、亮も機嫌がよかった。

バイト先に直接迎えにくると一緒に帰ってることがバレちゃうから、北村さんは気を利かせて近くの公園脇であたし達を待っていてくれた。


「店長に佐伯クビにするように言ってやるかな」

「そういうのはよくないよ。……佐伯さんだって、一応は仕事してるんだし」


複雑な心境でそう言うと、亮はなぜかニヤっと笑みを浮かべる。

よく見せる意地悪な笑顔を。


「妬いてたくせに?」


亮の笑みに捕らえられて、あたしは赤くなって口を結んだ。


バイト中は見ないようにしていた亮の顔を見たせいで、休み時間の従業員室での出来事が頭に浮かんでしまって。


だけどそんな事気にもしていないみたいに、亮は平然としていて。そんな様子に口を尖らせた。


……なんで亮は大丈夫なんだろ。

ドキドキしたりしてないのかな。


あたしがこんなに振り回されてるのに……。

なんか、不公平だ。





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