イジワルな恋人
【第十四章】 宣戦布告
「っていうか、それ普通だから」
前の席に座っている梓が、半分笑いながら言う。
いつもより少し早めに着いたせいか、教室にはまだ半分くらいの生徒しか登校してきていなかった。
「朝から暗い顔してるから何かと思って聞いてみれば……。
まぁ、奈緒は今までそういう事避けてきたんだから仕方ないけどさー。
今時、中学生でもそんな課題クリアしてるよ」
梓が少し呆れ気味に笑う。
必死の覚悟を決めて相談したあたしは、拍子抜けしながら恐る恐る聞く。
「……じゃあ、梓もそういう事思う?」
「思うよ! っていうか、そんな生ぬるいもんじゃないよ!
ライバルなんかいたりして、そのライバルが嫌な女だったりしたら、なんとかして自分を優位に立つ方法ばっかり探すし。
あたしだけじゃなくて、みんなそんなもんだよ。
心の中なんかみんなスゴイよ、きっと。奈緒なんか全然だから」
身振り手振りで力説する梓を見て、緊張が緩んでいった。
「……そうなんだ」
……なんだ、みんなそうなんだ。
こんなどろどろした感情を、みんな持ってるんだ。
ただ好きでいる時には、決して気付かなかった感情。
両思いになれたから。
想い返されることを、知ってしまったらから。
だから、見つけちゃった感情。
欲張る心が、苦しい。