イジワルな恋人
【奈緒SIDE】
「昨日のバイキングすごかったよー。愛なんか14個も食べてたし!
また割引券もらってきたから、来週、奈緒の都合いい時行こうよ。絶対行くだけの価値はあるよ」
「ホント? 来週なら……」
放課後の教室。
梓の誘いに、バイトのない日を思い出していると、突然、教室にいた生徒がざわめきだした。
まるで地震でもあったようなざわめきに、あたしも教室を見渡す。
……何?
クラスの生徒の視線が一点に注がれている事に気付いて視線を向けると……。
「……―――」
「……みっけ。おまえ……じゃわからねぇか。
……奈緒」
緊迫する教室の入り口には桜木先輩の姿があって、事もあろうにあたしの名前を口にした。
桜木先輩の姿に、押し黙っていた生徒達が小さな声ではしゃぎ出す。
「……何?」
「ちょっと来い」
「え……ちょっと!」
それだけ言って歩き出してしまった桜木先輩を呼び止めても、振り向こうともしない。