イジワルな恋人
「……俺が悪かったから機嫌直せよ」
10ヶ所近くつけられたキスマークを隠すように、あたしは亮に背中を向けていた。
……亮はわかってない。
亮の様子がおかしかった事、あたしが気付いてないと思ってる?
今のでごまかせたと思ってる?
……逆だよ。
やっぱり何かあったんだって、確信した。
だって、いつもあたしをからかう時にする楽しそうな顔を……、
さっきはしてなかった。
「……いい加減、機嫌直さねぇと背中にもつけるぞ」
亮の指が背中をつっつく。
「……感じちゃった?」
身体をすくませて振り向くと、反応を笑う亮の首筋に、あたしのつけたへたなキスマークが目立っていて……。
思わず目を逸らした。
……佐伯さんと何があったかは知らないけど。
あたしは、亮を信じる……。
佐伯さんには、負けない。
亮の首筋のキスマークが、あたしの決意を表していた。