イジワルな恋人
【第十五章】 秘め事
「なんか機嫌いいじゃん?」
5時間目の自習の時間、隣に座った梓が聞いてきた。
「だって今日給料日だもん」
「なんだ、あたしはてっきりそのキスマークが原因かと思ったのに……」
梓にからかわれて、慌てて首を隠す。
「……やっぱり目立つ?」
「うん。っていうかいくつつけてんの? そんなん隠しきれるわけないじゃん。
……あ! あたしアイロン持ってるから巻いてあげよっか?
髪フワフワさせれば首元とか少しは隠れるんじゃない?」
アイロン……。
今までしたことないし、ちょっと興味あるかも。
「……じゃあお願いしようかな」
バイトが休みな事も気持ちを後押しして、梓の提案に素直にうなづく。
コンセントの届く一番後ろの席に移動すると、梓が慣れた手つきであたしの髪を巻きだした。
後ろから教室を見渡すと、可愛い髪型をした子ばかりが目立って、自分がどれだけ周りに興味を持ってなかったかっていう事を、今さらながら思い知る。
流行りのケータイに、デコレーション。新色のグロス。
そしてふんわりいい香り……。
「……香水でも買おうかな」
「あれ、めずらしいじゃん。オシャレに興味でてきた?」