イジワルな恋人



だけど、桜木先輩の頬には、あたしのせいでついたキズと、それを覆う、あたしがあげた絆創膏があって。


それを見ると、ついて行かないのも悪い気がして、あたしは黙って桜木先輩の後ろを歩いた。

開けられた廊下の窓から、5月の気持ちいい風が流れ込む。

前を歩く桜木先輩の髪が、風で揺れる。

……こう見ると本当に背が高いなぁ。

茶色の髪は男にしては長い方。

サイドの髪が揺れるたびに、髪の間からピアスが光った。


差し込む夕日に反射するピアスをぼーっと眺めていると、桜木先輩が一つの教室のドアを開けた。


教室には西日が射し込んでいて、部屋全体がオレンジ色に染まっていた。

あたしは後ろ手にドアを閉めて、ドア横の壁の前に立つ。二人きりの教室に、何かされそうになってもいつでも逃げ出せるように。


「おまえさぁ……」


話し出した桜木先輩に視線を上げると、真面目な顔をした桜木先輩と目が合った。


「俺と付き合わねぇ?」


思いがけない言葉に、思わず言葉を失う。


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