イジワルな恋人


「……」


もう一度亮の口から聞きたくて、呼び止めようと思ったけど……。

亮の後ろ姿を見て、開いた口を閉じた。


それから、亮にバレないようにこっそり笑う。


……亮、耳が真っ赤だ。

確か前にもあったよね、亮の照れ隠し……。


たった一言のために赤くなっている亮がおかしくて、思わずにやけてしまう顔を隠した。


エッチなことは平気で言うくせに……。

後ろ姿を見つめて、微笑む。


また一つ、亮の優しさに触れた気がした。




……亮。


あたしに何も言わないのも、亮の優しさなの……?


あたし……、

佐伯さんが怖いよ……。



亮がどんなに優しくても、どんなに想ってくれていても……。



佐伯さんが怖い―――……。





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