イジワルな恋人


「あ、亮! あたし今日買い物したいから途中で降ろしてもらってもいい?」


車に乗り込もうとしている亮に声をかける。


「買い物? 何買うんだよ」

「……香水」


なんとなく目を逸らしながら答えた。


「ふぅん。じゃあ俺も行く。とりあえず乗れよ」

「……」


……亮も来たら、恥ずかしくて、とてもじゃないけど買えないよ。


あ、でも、亮の香水は普段つけるわけじゃないし、普段用に何か買おうかな。

亮もいつもつけてるから、香水つけてる女の子嫌いじゃないハズだし。


「奈緒? 早く乗れ」

「あ、ごめん」


車の中から呼ばれて、慌てて亮の隣に乗り込んだ。

ドアを閉めると同時に車が動き出す。


「おまえ、香水つけてなかったよな?」

「あ、うん。でも……ほら、みんな持ってるし……。

あたしも買ってみようかと思って……」


鋭いところをついてくる亮に、しどろもどろになりながら返事をする。


「じゃあ前行った駅ビルにでも行くか。確か香水売り場あったし」

「うん。亮がこれとってくれた所だよね」


鞄についている林檎うさぎを指差しながら笑顔を返す。


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