イジワルな恋人
亮の鞄にも、まだ林檎うさぎが揺れているのを見て、余計に嬉しくなった。
あたしが一方的に押し付けたのに。
なのに、つけてくれた。
……亮はいつもあたしに優しかった。
クールぶってて全然素直じゃないし、すぐエッチなことするし、偉そうだし、授業もサボるし……。
……だけど、優しい。
2人の鞄に揺れる、おそろいの林檎うさぎを眺めて……。
小さく胸の中でくすぶる不安を感じながら微笑んだ。
駅ビルの中は、ちょうど下校時間だったからか、学生で賑わっていた。
普段電車に乗らないあたしは、人混みにあまり慣れていないから歩きにくくて……。
前を歩く亮の後ろを追うのがやっと。
それさえ上手くできなくて何人かとぶつかる始末。
「……ほら」
そんな様子を見かねてか、後ろを歩くあたしに亮が手を差し出す。
初めてのシチュエーションに、少し戸惑いながら亮の手を握った。
「おまえトロすぎだろ」
「……だって」
不貞腐れながら、でもそれ以上にドキドキして手を繋いで歩いた。
いくつかのお店を通り過ぎて、ようやく目当ての香水売り場が目に入ってくる。
店先にあるものだけでも20種類くらい、中にはもっとたくさんのキレイな香水のビンが置いてあって……。
それは、嬉しい反面、初心者のあたしにはちょっと困る。