イジワルな恋人


「……どれがいいんだろ。とりあえず一番人気のやつかな」


サンプルの香りをかいでる隣で、亮も違う香水のサンプルに手を伸ばす。

……なんかデートっぽいかも。

今までこういうのってなかったから新鮮だな。


亮の横顔を眺めていて、ふと、周りの視線に気づいた。

女子高生がすれ違いざまに亮を見ていく。

それは明らかに憧れの眼差しで……、あたしは思い出した事に納得してから亮を見た。


……そっか、亮カッコいいもんね。

最初は納得いかなかったけど……、今は、やっぱり好きだからかな。

見つめられると、どうすればいいのかわからないくらい、カッコよく見える。


自分の心境の変化に少しだけ戸惑いながら横顔を見つめていると、急に振り向いた亮と目が合って……

慌てて視線を移す。


「これは? 俺、こういうの好き」

「あ、うん」


ドキドキしながら、サンプルを受け取る。

亮が選んだ香水は、甘すぎない透明感のあるような香りがした。

セクシーというよりは可愛らしい香りで、自然と顔が微笑む。


「……いい香り」

「じゃ決まり」


亮が商品の番号札を持ってレジに向かう。


「あ、亮! あたし自分で、」

「いいから、おまえは店の前で待ってろ」

「でも、」

「待ってろ」


強い口調に言葉を遮られて、しぶしぶ店先に出た。


……好きな人からのプレゼント、嬉しいに決まってるんだけど。

慣れていないせいか、なんか遠慮しちゃう……。



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