イジワルな恋人
「あ!!」
帰りの車の中で、あたしは思い出した事に声をあげた。
「なんだよ?」
隣に座る亮が、少し顔を歪ませて聞く。
「香水……もう一つ買おうと思ってたのに忘れちゃった……」
がっかりして肩を落とすと、その理由を聞かれる。
「別に2つも要らねぇだろ。使い分けすんの?」
「……ううん。亮と同じのが欲し、」
言葉の途中で慌てて口を押さえたけど……遅かった。
どうしよ……どうにか誤魔化して……、
「……なんで俺のが欲しいんだよ」
「えーと……今、流行ってて! ……彼氏の香水持つのが」
必死に説明するあたしを、亮が冷ややかに笑いながら見つめるから、その視線から逃れるように顔を背けた。
「……へぇ。聞いたことねぇけどなぁ?」
「……でもっ、本当だもん」
強く言い切ると、亮はそんなあたしを見て笑う。そして。
「北村、うちにまわせ」
「はい」
「俺んちにいくつかあるから持ってけよ」
状況についていけずにいるあたしに、笑みを浮かべた。