イジワルな恋人
なんだ……。
いっつも不機嫌そうな顔ばっかりしてるけどこんな顔もするんだ。
意外と可愛いく思えてしまう桜木先輩の笑顔に、警戒していた気持ちが少しだけ緩んでいったのを感じた。
「ねぇ。そうに笑ってた方がカッコいいよ」
褒めたつもりだったのに、桜木先輩は顔を赤らめてから怒ったような声を向けた。
「……っ、うるせぇよっ! ……それより返事は?」
まるで顔を隠すように背中を向けた桜木先輩に、あたしはムッとしながら返事をする。
「でもそれ、あたしにメリットないし」
そんな事したら桜木先輩に寄り付く女子に恨まれるだけだし。
ただでさえ女子からの呼び出しも多いのに……。
「あるだろ? メリット」
「え……」
「おまえ、言い寄ってくる男の対応に困ってんじゃねぇの?」
「……」
図星をつく桜木先輩の言葉に黙り込む。
困ってないって言えば嘘になる。
高校入学したばかりのこの時期だからか、やたら男子からの誘いが多くで、正直迷惑に感じてた。どうにかできないかなって思ってた。