イジワルな恋人
「桜木。そんなに大事なら泣かせるなよ」
2人の止まった時間を動かしたのは、中澤先輩の言葉だった。
亮があたしを抱き締めたまま口を開く。
「……もう泣かせねぇよ」
身体から直接響いてくる亮の声。
亮に触れていれば、不安なんて飛んでいくのに……なんであたしはこんなに弱いんだろう。
いつも……、いつも、亮に助けられてばっかりで、そんな自分が嫌になる。
ずっと一人でも大丈夫だったハズなのに。
ずっと一人で頑張ってくつもりだったのに。
……亮が好きすぎて、怖いよ。
好きだからこそ、不安ばかりで……
こんな感情、初めてで怖い。
しばらくして、中澤先輩が立ち去る気配がした。
そして、漏れた亮のため息が肩にあたる。
「……はぁ」
そのため息に振り返ろうとしたのに……亮は腕を緩めなかった。
「……亮?」
「おまえ、なんで中澤と一緒にいたんだよ」
その声は少し怒ってるみたいで、戸惑いながら答える。