イジワルな恋人


【奈緒SIDE】


放課後、掃除中の教室がざわめき出した。

変な緊張感に教室のドアに視線を移すと、そこには亮の姿があって。

慌てて駆け寄る。


「ちょっと……、教室には来ないでっていつも言ってるのに、あ……」


亮の横に、関先輩がいることに気付いて、小さく会釈をした。


「久しぶり、奈緒ちゃん」

「久しぶりです」


関先輩の人柄がにじみ出たような素直な笑顔に、つられて笑顔になる。


「紹介して欲しいっつってたから連れてきた」

「あ、梓の?! ありがとっ! きっと喜ぶよ!」


亮達に待つように言ってから教室を見渡すと、ちょうどゴミ捨てから戻ってきた梓を発見して、その腕を勢いよく掴む。


「梓! 亮が男の子紹介してくれるって」

「えぇ!!」


顔を歪めた梓の反応は、想像とは違っていて、少しだけ不安になる。


「どうしようっ! 髪もメイクも適当なのに……、

どうしようっ、変じゃない?!」


梓の言葉に安心して笑いながら、手でOKのサインを作った。


あんなに意気込んでいたのに、照れてなかなか動けない梓がなんだか可愛くて……。

思わず顔を緩む。


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