イジワルな恋人
【第十七章】 新しい朝
【亮SIDE】
「桜木先輩もいりますよね?」
「あ? ……ああ」
変に緊張しながら奈緒を見ていた俺に、梓が話しかけた。
「じゃあ、はい」
隣では、梓から受け取ったプリクラを奈緒がケータイに貼っていて……俺の視線に気付くと、笑顔でケータイを見せる。
……嬉しそうな笑顔を。
「……武史、もう別行動でいいよな」
「あ? ……まぁいいけど。あ、おい亮?!」
返事を聞いてすぐに、奈緒の手を掴んでゲーセンを足早に出た。
「亮っ、急に何? どこ行くの?」
「……俺の部屋」
俺の答えに、奈緒は何も言わずに後ろをついてきた。
車の中でも何も話さない俺達を、北村が心配そうにバックミラーで見ているのがわかった。
繋いだままの手から……、
お互いの緊張が伝わっているみたいだった。
沈黙と緊張を乗せた車が、少し暗くなった道を照らして走る。