イジワルな恋人


【奈緒SIDE】


手を繋いだまま、亮が部屋のドアを閉める。

亮の部屋はこのあいだ来た時から何も変わっていなくて、やっぱり生活感は感じられなかった。


でも今はそんな事はどうでもよくて。

しばらくの沈黙が続いて……、亮がようやく口を開く。


「……おまえ、なんかあった? 昼間からおかしいだろ」


納得がいかないといった様子で聞いてきた亮に、首を横に振る。


「じゃあ、どうして急にこんな……」


言い切る前に、あたしは亮に抱きついた。


「……急じゃないよ」


亮の胸に顔を押しつけたまま話す。

亮の香りが、あたしの心拍数を高めていく。


「……ずっと、亮に触れて欲しいって思ってた……。

亮と、離れたくないって、思ってた……」


佐伯さんのことがあってから……、ずっと、もどかしさを感じてた。

亮との埋まらない距離に。


抱き合っていれば安心できる。

触れていれば不安も飛んでく。


だから……、思いきり抱き締めて。


亮とあたしを、実感させて……。




亮との距離を、なくしたい。






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