イジワルな恋人
【奈緒SIDE】
「あ、奈緒ちゃん」
亮に家まで送ってもらうと、時間はもう22時をまわっていた。
「ごめんね、遅くなって……ちょっと、友達と、」
少し気まずくなりながら話すあたしの言葉を、おばあちゃんが遮る。
「そんな事より真一君が見えてるのよっ。急いで」
「え、真ちゃん?」
リビングに急ぐと、ソファに真ちゃんの姿があった。
「お、やっと帰ってきたか」
微かにお線香の香りが部屋に残っている事に気付く。
仏壇に目を向けると、あと数センチになった線香が、細く白い煙を天井に向かって伸ばしていた。
「こんな時間までどこ行ってたんだ~?」
ニヤリと笑う真ちゃんを曖昧に笑って誤魔化しながら、真ちゃんの斜め前に座った。
「どうしたの?」
真ちゃんが家にくるなんて、かなり久しぶりだから少し戸惑いながら話しかけた。