イジワルな恋人
……お兄ちゃんにお線香あげに来ただけじゃないよね?
珍しい来客に、あたしもおばあちゃんも、その理由が分からなくて少し困惑していた。
「……ちょっと桜木の事で話があってさ」
真ちゃんが話しにくそうに口を開いた。
「……亮がどうかした?」
おばあちゃんがお茶を入れ直すと、真ちゃんが軽く会釈を返す。
そのまま少し黙っていた真ちゃんだったけど、チラっとあたしに視線を向けて、ようやく話を切り出した。
「あいつよくサボってるだろ? 出席日数が足りないんだよな……。
多分、あと数日サボれば留年だと思う」
「……留年?」
「そう……。先生方は桜木を敬遠してるから何も言わないけど……。
俺も、先週気付いてさ、それで……」
真ちゃんが、組んだ手をぎゅっと握りしめる。
「……どうにかならないの?
だって……、亮、成績はいいんでしょ?」
あたしの言葉に、真ちゃんは視線を落としたまま頷いた。