イジワルな恋人
「なんか、ちょっと……こんな展開は自分でもどうかと思うんだけど……」
「うん?」
「……関先輩、好きかも」
「え……っ、ええ!」
突然の告白にびっくりしたけど……すぐに笑顔になって梓を抱き締めた。
恋をした梓は、いつもの勢いはなくやけに女の子らしくて、愛にからかわれたりしてた。
……関先輩なら大丈夫だって、亮も言ってたし。
梓ならきっと、関先輩と素敵な恋ができるよね。
近いうちに聞かされるノロケ話だとか愚痴を想像すると、勝手に頬が緩む。
そんな時が来るのを、待ち遠しく感じた。
なんだかいじらしい梓の姿に、一日中笑っていたあたしが笑顔を失ったのは……
昼休みだった。
「ねぇ、校門にいるのって誰かなぁ」
4時間目の移動教室からの帰り。
渡り廊下での愛の言葉に、あたしも窓から見える校門に目を移した。
「……っ!」
校門にいたのは、ケータイを片手に立っている佐伯さんだった。
「奈緒?!」
佐伯さんの姿を少し見ていた後、走り出した。
佐伯さんのいる校門に向かって。