イジワルな恋人
「そぉだ。じゃあこういうのは?
亮くんと別れてくれなかったら……亮くんの病院の悪い噂流しちゃう、とか?」
次の瞬間……。
あたしの平手が、佐伯さんのタバコを飛ばした。
「……っ」
頬を押さえた佐伯さんは、少し顔をしかめた後、あたしを見て気味悪く笑った。
「……アンタ、自分のしたこと分かってる?」
睨みつけるあたしを横目に……佐伯さんが、たまたま体育館から出てきた先生に声をかける。
「すみませーん! ここの生徒に急に殴られたんですけど……きゃあっ!」
先生に向かって叫んだ佐伯さんを突き飛ばしたのは……。
「……ホント最低だよ、おまえ」
「亮っ、なんで……?」
佐伯さんを叩いた手を、もう片方の手で握っているあたしに亮が少し笑ってみせる。
「屋上から丸見え。つぅか慣れねぇことすんな。
……殴った方も結構痛いだろ」
そう言うと、あたしの手を優しく握った。
ジンジンと痺れている手に、亮の熱が溶け込んでいく。