イジワルな恋人


「大丈夫ですか?!」


佐伯さんが、駆け寄ってきた先生の手を借りて立ち上がる。


「この人達が、私をいきなり叩いてきて……」


さっきまでとは態度を変える佐伯さんに……、

我慢できない怒りを覚えて、震える口を開く。


「先生っ! 違っ……」

「……先生、俺が殴って突き飛ばしました」


え……?

驚いて亮を見上げた。


あたしの視線の先で、亮は真面目な顔で先生を見ていて……。


「桜木っ、おまえサボリだけじゃなくて暴力まで……下手したら傷害事件だぞ?!」


体育担当の先生が、亮を怒鳴りつける。


「先生っ、違いますっ! この人を殴ったのはあたしです!」


亮の前に立ってそう言うと、先生は困った顔であたしを見つめて、ため息をつく。


「……水谷、おまえ、桜木に脅されたのか? 

大丈夫だよ、おまえがそんな事するやつじゃないのは分かってるから」

「違いますっ、本当にあたしが……」

「いいから教室に戻りなさい。桜木は職員室で説明しなさい」


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