イジワルな恋人


そう言うと、先生が亮と佐伯さんを連れて校舎に向かって歩き出す。

先生の後ろを歩く亮があたしをじっと見て……小さく微笑んで背中を向けた。


「違うっ……!! 先生!! 聞いてっ、本当にあたしがっ」

「水谷。いい加減にしろ。昼休み終わるぞ」

「……っ」


……なんで? 

なんで信じてくれないの……?


『アンタ、自分のしたことわかってる?』

佐伯さんの言葉が頭によぎる。



……あたしのせいだ。

あたしのせいなのに……

なんで亮が……っ。



小さくなっていく亮の後ろ姿に、手をきつく握りしめた。


雲の多い空からは、ついには雨が落ちてきて……静かな雨音が辺りを包む。


……ダメだ。落ち込んでる場合じゃない。


先生の誤解を解かなくちゃ……。

佐伯さんのせいだとは信じてもらえないかもしれないけど、せめて、亮じゃないって説明しなくちゃ……っ。

あたしが殴ったんだって、説明しなくちゃ。


亮の後を追うように、校舎に向かって走り出す。


職員室のある中校舎に入った時、後ろから呼び止められた。



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