イジワルな恋人


違うよ、先生……。

……違う。

……違うっ!



「先生っ! あたしが……っ」

「水谷っ!」


先生の後を追おうとしたあたしを、中澤先輩が止めた。


「離してくださいっ! ……佐伯さんを殴ったのはあたしなんです! 

亮は……亮は、あたしをかばって……っ」


暴れるあたしを、先輩が大声で制止する。


「それでもっ! 桜木は自分の意志で水谷を守ったんだよ! 

今さら水谷が本当の事言ったってどうにもならない。

今までの事もあるし……桜木の処分はもう……、取り消しにはならない」

「そんな……っ」


『今までの事』って……授業サボってた事? 

学校での態度が悪いから……?


「それに……水谷、特待生だろ? こんなのバレたら外されるよ。

……それを分かってたから、桜木はおまえかばったんじゃないのかな……」


力が抜けておとなしくなったあたしから、中澤先輩がそっと手を離した。


「特待生って……、そんなの、どうだってよかったのに……っ。

特待生なんて、そんなの……っ」


亮の方が大変なのに……っ。


なんで……、

亮……っ。



あたし、どうしたらいいの……?




< 395 / 459 >

この作品をシェア

pagetop