イジワルな恋人
違うよ、先生……。
……違う。
……違うっ!
「先生っ! あたしが……っ」
「水谷っ!」
先生の後を追おうとしたあたしを、中澤先輩が止めた。
「離してくださいっ! ……佐伯さんを殴ったのはあたしなんです!
亮は……亮は、あたしをかばって……っ」
暴れるあたしを、先輩が大声で制止する。
「それでもっ! 桜木は自分の意志で水谷を守ったんだよ!
今さら水谷が本当の事言ったってどうにもならない。
今までの事もあるし……桜木の処分はもう……、取り消しにはならない」
「そんな……っ」
『今までの事』って……授業サボってた事?
学校での態度が悪いから……?
「それに……水谷、特待生だろ? こんなのバレたら外されるよ。
……それを分かってたから、桜木はおまえかばったんじゃないのかな……」
力が抜けておとなしくなったあたしから、中澤先輩がそっと手を離した。
「特待生って……、そんなの、どうだってよかったのに……っ。
特待生なんて、そんなの……っ」
亮の方が大変なのに……っ。
なんで……、
亮……っ。
あたし、どうしたらいいの……?