イジワルな恋人
「……それにしても」
亮があたしの顔をじっと見つめる。
「やっぱり昨日一緒に行けばよかったな……」
その言葉に、なんとなく左頬の傷を手で隠した。
「ダメだよ、停学中なんだから。
……佐伯さんは多分もう何もしてこないよ。
あの事も言いふらさないと思う……」
そう話すあたしに、亮の怪訝そうな表情が向けられて、困り顔で微笑んだ。
なんとなく、漠然と……
あたしが佐伯さんの気持ちが分かるみたいに、佐伯さんも昨日の事をきっかけに、あたしの気持ちを理解してくれたような気がしていた。
本当に漠然とした思いだったけど……昨日の佐伯さんの涙は嘘じゃないと思ったから。
「……まぁ、おまえがそう言うならいいけど。なんかあったら絶対に言えよ?」
案外心配性の亮に、笑いながら頷いた。
後日連絡って形を取られていた亮の処分は、学校から連絡があって、『停学3日間』だって告げられた事を亮から知らされた。
思っていたより短かった処分に、あたしは店長の顔を思い出した。
後で聞いたときには、笑って誤魔化されたけど……。
その笑顔で、店長が学校側と掛け合ってくれた事を確信した。