イジワルな恋人
亮の停学が明けた初日。亮に電話をした。
「あ、今日ね、ちょっと風邪っぽいから病院行ってから行くね」
『じゃあ俺も付き合……』
「ダメっ! ちゃんと学校行って授業受けて。停学明けなんだからちゃんとしなくちゃ」
納得していない様子の亮の返事を聞かないで電話を切った。
……ごめんね、嘘ついて。
そして、学校に行く準備を済ませてから時間より早く家を出た。
もしかすると、亮が迎えにきちゃうからもしれないから。
そう思ってわざと早めに病院に向かった。
『桜木総合病院』
大きな建物を目の前に、一つ深呼吸してから病院内へ入った。
病院というよりはホテルのロビーみたいで……
想像したモノとはあまりに違う院内に、少しキョロキョロしながら入ってすぐの受け付けに名前を告げる。
「あの、先日電話した水谷といいます。
院長先生と約束してるんですが……いらっしゃいますか?」
急に院長の名前を出したからか、受付の女の人に少し疑った目で見られる。
「少々お待ちください」
女の人はそう言うと、電話をかけ始めた。
しばらくロビーの椅子に座っていると、関係者専用のエレベーターから出てきた女の人に声をかけられた。
「水谷様、こちらへ」
会釈をして、その人とエレベーターに乗る。エレベーターが止まったのは、11階。